その尖ったゲーム性(有利区間リセット後の200G以内ではほぼ当選しないなど)に賛否の声がありつつも、他に対抗馬となるような新台もない状況という事もあり、現状のホールで『バジリスク~甲賀忍法帖~絆』に匹敵するメイン機種的な扱いを受けている『Re:ゼロから始める異世界生活』(以下、リゼロ)。
なぜこれほどまでにリゼロが支持を集めたのかについては、スロッター各人が様々な推論を展開している事と思います。
今回はそういったトークテーマを「版権モノ」という視点で語ってみることにします。
『Re:ゼロから始める異世界生活』とは?
『Re:ゼロから始める異世界生活』は元々、原作者の長月達平さんが小説投稿サイト『小説家になろう』で2012年から連載を始めた小説で、それが後にMF文庫Jから書籍(ライトノベル)として発売されました。
後に漫画化、そして2016年にはテレビアニメ化もされ、2019年秋には新たなOVA(劇場公開アニメ)や、その先にはテレビアニメの2期も決定しています。
数多くあるアニメ作品の中でも大ヒット作の部類に間違いなく入る作品でしょう。
パチスロにおける版権の重要性
打つ理由を提供できる
版権のもつ効用として最も分かりやすいのはコレでしょう。
海のものとも山のものとも判断の付かないような題材の機種よりは、知っている版権ものの方がリンクを作りやすく、その作品が好きであればなおの事強力な吸引力を発揮してくれます。
とは言え、ホールの客数を増やすような版権となると本当に限られてくるのが実際の所で、そこまでの効果はもはや期待できないと言うのが一般的な見解ではないでしょうか。
世界観を自前で構築しなくて良い
現状、メーカーが好んで版権を獲得する理由として一番大きいのはこの点じゃないでしょうか。
よく「版権に金かけるぐらいなら、オリジナルもので台の値段を安くしてくれ」というような意見がありますが、オリジナルものを作るのもタダではないわけです。
どことは言いませんが、とある非常にオリジナリティ溢れる台を提供してくれているパチンコメーカーさんは、タイアップに頼らないオリジナルの世界観を構築した機種を開発した結果、むしろタイアップした方が安上がりだったんじゃ?というような経費が掛かってしまったという話もあります。
つい最近出した新台でも、完全オリジナルの世界観なのに登場人物(実写)の幼少期の写真(多分本物)を絡めた回想演出など、何を思ってこんなところに力を入れたのかと言ったような演出が搭載されており、ノンタイアップ=安価とも言い難い実情もあります(このメーカーが少しオカシイだけで安価に作ろうと思えば作れるのも確かですが)。
費用的な面以外でも、単純に自前で世界観やキャラクターを作り上げるのは大変で、そしてクオリティーまで求めると中々簡単にはいかないものです。
中途半端に費用をかけて微妙な世界観&キャラクターの機種を作るぐらいなら、ある程度実績のある版権を借りて来た方が結果的にお得…という判断になるのも分かる気がしますね。
『物語』がある事の強み
今回一番語りたかったのはこの部分。
自社版権でキャラクターや世界観はある程度自前で作れても、物語まで用意するとなると大変です。
その点、リゼロのような『物語』を持っている版権は強いんですよね。
リゼロを打っていて気持ちいい瞬間トップ5に間違いなく入るであろうものとして、白鯨戦中の回想演出「花は好き?(という名前かは分かりませんが)」があります。
継続率が厳しい&勝利が約束されているような状況でもない時、自分は下パネルが消灯するのを願ってレバーを叩いています(回想演出発生時は下パネルが消灯する)。
AT確定演出をあのように印象的な演出で表現できるのは、元になっている版権のストーリー性あってのもの。
大都はこういった気持ちいい瞬間を作り出すのが抜群に上手いメーカーですが、仮にこれを『番長』や『秘宝伝』でやろうとしても、この回想演出のもつ鮮烈な印象には届かなかったと思うんです。
オリジナル版権に定評のある大都ですら、自社版権では届かない領域がある事を認識しているからこそ、リゼロとのタイアップという選択をしたんじゃないかと自分は感じています。
それはある意味、『バジリスク~甲賀忍法帖~』にあって『番長』にないもの、『ユニバ』が持っていて『大都』が持っていなかったものとも言えるかも知れません。
一流の料理人である『大都』が、一流の食材である『リゼロ』を調理して生まれた快作が、パチスロ『Re:ゼロから始める異世界生活』なのでしょう。
『リゼロ』の版権的な強み
直近で言えば、『パチスロあの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(以下、『あの花』)をサミーが「リゼロを超える有名版権」として押しているようです。
たしかに『あの花』と『リゼロ』の瞬間最大風速的な人気具合で言えば、『あの花』に軍配があがるような気もします(あまり変わらないような気もしますが)。
しかし、ここで非常に重要な点として、作品の鮮度というか熱量の保持量といった話になります。
『あの花』は2011年のアニメです。
対して『リゼロ』は2016年にテレビアニメの1期が放送されて、2期も近々予定されています。
いくら有名版権、当時人気があった版権でも、年月が過ぎれば保持している熱量は減っていますから、客寄せ的な意味での版権力は低下しています。
その点『リゼロ』は2016年4月開始のアニメでしたから、約3年後(放送終了時から考えると約2年半後)にパチスロ化されている事になります。
『リゼロ』の版権的な強みは、現在進行形で熱量を持っている版権をパチスロに持ち込めた事に他なりません。
特にパチスロ『リゼロ』の初期稼働を強力に牽引した若年層の中には、「ちょっと前に見たアニメ」というような思い入れがあった人も少なくなかった事でしょう。
パチスロ『リゼロ』の大ヒット要因を版権的な視点で見た場合、「版権の鮮度」というものの重要性を改めて感じたメーカー関係者も多かったんじゃないでしょうか。
©長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活製作委員会