2019年内に撤去が予定されている台の中でも最も別れを惜しまれるのは、間違いなく『バジリスク~甲賀忍法帖~絆』でしょう。
押しも押されぬ2010年代のパチスロ機種最大のヒット機種ですね。
未来において5号機の歴史が語られる事があるとすれば、10人中10人が名前を上げるであろう5号機の中でも際立った代表作となったこの台ですが、そういった存在への道筋は決して順風満帆ではありませんでした。
今回は個人的な備忘録も兼ねて、『バジリスク~甲賀忍法帖~絆』が現在の地位を形成するまでの過程をたどってみたいと思います。
『バジリスク~甲賀忍法帖~絆』新台導入
2014年1月、当時のホールにおいて人気を博していた『バジリスク~甲賀忍法帖~2』の後継機として、『バジリスク~甲賀忍法帖~絆』が全国のホールへ導入されました。
歴史的な名機ですから、導入当初の盛り上がりも相当なものだったろう…と、当時を知らない人は思うかもしれませんね。
実はこの台、導入当初は全然人気が無かったんです。
というのも当時、バジリスクと言えばバジリスク2のイメージが強い状況であり、そのゲーム性(当時のART機としては比較的一般的なレア役でARTを抽選するスタイル)に慣れた打ち手からは「絆より2の方が良い」というような認識を持たれる事が非常に多かったんです。
バジリスク絆のゲーム性は、初代『バジリスク 甲賀忍法帖』のゲーム性を疑似ボーナスという形で表現したものであり、どちらかと言えば2よりも初代に近い仕様でした。
自分のように初代に思い入れのある打ち手にとっては、2よりも絆の方がよりパチスロバジリスクらしい台と思えたのですが、やはり当時はバジリスク2に思い入れのある打ち手も多く、さらには現在ではお馴染みとなったBC(バジリスクチャンス)とBT(バジリスクタイム)の関係性などへの理解が当初は中々得られず、新台として大量設置したホールなどではバジリスク2よりも少ない台数へ減台したホールも割と多かったように記憶しています。
初動至上主義の絶対的例外
ご存知の方も多いかも知れませんが、パチンコパチスロ業界はとにかく新台の初動が命という認識が強く、初週の稼働状況で結果が決まると言われているぐらいにそこが重要視されています。
なぜそんな状況になるかといえば、業界関係者曰く「初週で動かなかった台が後から盛り返す事なんてほとんどないから」だそうです。
そんな話を見るたび自分は、「バジリスク絆の初動がアレだった事はもう忘れちゃったの?」と思ってしまいます。
たしかに初期稼働が思わしくなかった台がその後も苦しい稼働状況となりやすいのは確かでしょう。
しかしそれは別に初期稼働が悪かった台に限った話ではなく、基本的には極々一握りのヒット機種を除けば大体の機種はジリ貧な稼働推移を描くものです。
さらに言えば、初動の悪かった機種はその後の扱いで冷遇されやすいので、その台の良さがユーザーに伝わらないまま消えて行く、そんな状況を自ら作り出しているように思えてなりません。
そんな中で、ある意味偶然の産物として、またある意味では必然的に「盛り返した」のがバジリスク絆という台でした。
消去法的抜擢でメイン機種の一角へ
もう何年も前の事なので明確には覚えていないんですが、たしかバジリスク絆が導入されてからの数か月間はさほどパッとするような台もなく、何となくAT・ART機コーナーの主役不足感がホールに蔓延していた時期だったように思います。
バジリスク絆と同様に今年で認定が切れる「まどか☆マギカ」や「アナザーゴッドハーデス」といった5号機末期のユニバ黄金世代の機種達も、登場時に関してはそれほど強力な存在感を示していた訳でもなかった点はバジリスク絆と同様だったように思います(ハーデスは比較的稼働していたかも知れませんが)。
そんな中で、やはり何だかんだとバジリスク2で築き上げたバジリスクブランドの強み、そして設定6が119%というマックス仕様、さらには目押しをせずとも遊戯可能なゲーム性も手伝って、気が付いたらAT・ART機コーナーの主役の座に座っていた…バジリスク絆という台はそんな経緯でホールの主役的ポジションを獲得していったような覚えがありますね。
広告規制が圧倒的追い風に
そんな中でバジリスク絆にとって願ったりかなったりな風潮が世間で広がりを見せて行きます。
それは、広告規制が敷かれた中において何とかして高設定の存在と出玉感をアピールしようと画策したホールが、「バジリスク絆に設定6を使う事で高設定&出玉をアピールする」という行動を積極的に取り始めた事です。
それまでの、特に設定状況が良い訳でもない地域のスロッター心理として、「どうせ119%の設定なんて使わないだろ」といった諦めが一般的にあったと思うんですが、そんな固定観念をぶち壊すレベルで、思いがけずバジリスク絆を「見せ台」にするホールが続出したのです。
そうなってくると、設定6に期待した打ち手はもちろん、その出玉感に惹かれた打ち手も巻き込み、コアユーザーからライトユーザーまでありとあらゆるユーザーがバジリスク絆を打ち始めました。
その結果、他に例を見ないレベルで、バジリスク絆という台の仕様に関する知識(弦之介BCの判別や朧BCの月判別などの知識も含めて)が比較的ライトなユーザーにまで浸透するに至りました。
そんな中で、初動では好反応を得られなかったバジリスク絆の魅力に多くの人が気が付いて行き、結果として5号機史上に残る名機にまで成長していったのです。
撤去までのバジリスク絆
これだけホールの主役を張って来た台ですから、多くのファンがいるでしょうし、多くのファンが別れを惜しんでもいるでしょう。
最近のホールでの稼働状況を見ても、なんだかんだと特に休日の稼働状況は目を見張るものがありますからね。
しかし最近は、さすがに設定6には期待しがたいという事を理解した人が多いのか、ガッツリ勝ちを目指す打ち手の標的からは徐々に外れていっているように思います。
であるなら、個人的に願いたい事として、パチスロの設定配分を考える立場にいる方々には是非とも「そこそこ遊びやすい設定状況」をファンに提供し続けてもらいたいなと心から願っています。
設定6はもちろん、設定5も無くて良いので、中間設定で最後までファンを(薄利多売で)遊ばせて貰いたいところです。
いやもちろん、旧基準機で抜いた分を6号機で還元というのも未来を見据えた真っ当な判断だとは思いますが、最近のバジリスク絆島を見ていると、緩やかに負けながら遊んでくれる客層になっているような気もするので、あんまりガッツリ抜かない方が結果的に最後まで安定した利益が出るんじゃないかなとも思いますし。
バジリスク絆ファンの皆さんは、くれぐれも打つ環境は厳選しつつ、撤去までの期間を絆と戯れる事をおすすめします。
自分も何とか、最後に一度ぐらい設定6が打ちたいな…と思いつつ、流石にもう機会がないかもなとも思っている今日この頃なのでした。